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大手資格学校で長く講師を務めた複数の講師が集まり、一級建築士合格へのサポートをします。 設計事務所/審査機関/建設会社等、様々なシーンで活躍する講師達が知恵を結集し、 大手資格学校とは異なる視点で、本試験の要素を深く読み解き、「合格する」ための情報提供を行っています。

(再掲) 令和2年度/本試験解答例

去年の本試験解答例(2020/10/11作成)です。

Twitterと同じ内容ですが、今年受験の方に是非読んで頂きたい内容のためブログに再掲します。特に、文中後半「設計の基本」は合格のために必要な要素について書いています!

 

(以下再掲)


一級建築士設計製図試験

本試験解答例|考察|分析

✅2020/10/11 作成  

 

全体図面

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1階平面図/配置図

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2階平面図

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3階平面図

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断面図

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〈課題文の考察〉

 

「主文」について

明確な用途を示すことなく、居住施設と居宅サービスを曖昧に設定。

具体的にしてしまうと、いろいろなところで辻褄が合わなくなる懸念が拭えなかったのではないか。

地域交流は外せないテーマなので盛り込んであった。

 

ユニット型は難しいので事前告知なしで出さないのでは?!と思ったが、出題された。

現状で国が考える高齢者施設の最善策がユニット型であるので、高齢者施設全般でユニット型を基本としてほしいという想いがある様子。

計画が難しいという認識はあるようで、比較的組みやすい室構成になっている。


注記で老人福祉法等の規定は無視してよいと入れて、辻褄が合わない場合の逃げ道を作っている。

つまり、建築基準法と課題文の内容以外は減点対象にならないということになる。

(例:静養室などは施設基準で求められるが、計画してなくても問題ない)


「敷地」について

居住施設系の過去本試験では、どこかに公園の設定があったが、今回はなかった。その代わり、少し敷地サイズを大きくして、隣地境界からの空きが確保しやすくしている。

道路の幅員が狭く、西側は最低幅員の4mを設定している。

歩道付きの道路も8mと狭い。

※このアカウント(一級.com)で公開した事前予想での敷地設定は北側メイン(歩道付)、西側サブ(歩道無)、周辺は住宅系と近かった。


建ぺい率80%で、特に気にすることなく計画できた。

近年は70%が多く、建ぺい率違反で失格!をやりすぎて、だれも引っかからなくなったからか。

もしくは、準防火地域の準耐火建築物での割り増しができたため、80%にしたのではないか。

 

既存の建物撤去範囲を設定してきたが、埋戻し部分の地耐力には触れていない。この部分を地盤改良やラップルコンクリートなどで地耐力を確保する措置をしておけば間違いない。

 

地下水位の設定がなかった。過去の本試験での地下水位の設定はダミーだったのでは?!

実務では地下水位より基礎や建物が下がることは当然起こりうる。止水対策をどうするかがポイントになるが、試験でそれを求められることはなかった。


「建築物」について

2400㎡~3000㎡と面積の幅が広い。居宅サービスを1階に設定すれば、下限値に近い計画が可能。

上限に近いボリュームだと、かなりゆとりのある計画になり、スペースを埋めるのが大変になる。


「設備計画」について

設備は受水槽方式の指定があったが、かなりコンパクトな機械室。

消火ポンプ室の指定もあり、スプリンクラーの必要な用途ということになる。

面積区画の倍読みができ、耐火建築物なので、3000㎡まで面積区画は不要。竪穴区画のみでよくなる。

 

「要求室」について

室面積は“〇〇㎡以上”と実務での取り扱いに合わせた出題。ギリギリを狙うのではなく、大きめに設定すればよい。

※事前予想では、“○○㎡以上”という出題もありえると予想。


〈計画のポイント〉

計画のポイントは、1ユニット+居宅サービスを2・3階でまとめ、スカスカな1階が埋められれば難しくない。

1階の地域交流スペースが西側に計画することになるので、管理を南か東にまとめられれば、ゾーニングはうまくいく。

東に管理をまとめた場合、西側道路をどのように利用するかに工夫が必要。


〈コア配置〉

コア配置は

①北中央・南中央

②北中央付近に2つ

③中央スパンに2つ

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総合的に計画がしやすいのは、パターン②。


「その他の施設等」について

駐車・駐輪台数は少なく、外構計画は難しくなかった。

車寄せも特に目新しい設定はなく、問題なく計画できる。庇の高さ設定も普通の計画で問題ない。

 

「計画の要点等」について

(1)“居住部門の個室の計画において”とあるのは、設問の意図としてユニット型をどう計画したかが聞きたかったのではないか。イメージ図のスペースも大きく設定されている。

居室内の使い勝手だけでは不十分か。


(4)構造計画の耐震計算ルートは、耐震壁を設けない純ラーメン架構であれば、“ルート3”。

ルート3は、許容応力度計算となるため、経済性の高い無駄のない構造設計が可能。

特に目新しい設問は(4)ぐらい。その他は過去の本試験での出題や一般常識で対応可能。


「試験の難易度」について

今年の試験の難易度としては、比較的簡単な部類だったのではないでしょうか。

用途を明確にすると、異種用途区画など、整合の難しいところが出てくるため、曖昧にぼかしたと思われます。


新試験傾向(平成21年)に変わって以降、“関係性のない複合用途としない”、“パズルを難しくしない”という前提で試験問題を作成しています。

つまり、本試験は「設計の基本」が備わっていれば、十分対応できる内容です。


〈設計の基本〉※重要!

「設計の基本」とは、1番目に利用者にとってわかりやすく、使いやすいこと、2番目に管理がしやすいこと、です。

 

わかりやすい共用部(エント、廊下、階段EV)、特に廊下はクランクの少なく、見通しのよい計画を心がけてください。管理は利用者動線をできるだけ遮らないよう配慮してあれば構いません。


管理側が充実して、利用者をないがしろにした計画では本末転倒です。重要なのは利用者ファーストで計画ができているかです。

 

以上ができていれば、あとは、“要求図書”に記載する内容を図面にすべて網羅するだけです。


過去の本試験は、7m×7m、7m×6mの均一スパンで90%以上計画できる内容です。

床面積が同じであれば、どんなスパン割りでも大して変わりません。

最善のスパン割りを見つけ出すのは6時間半では不可能です。パターンに嵌め込むように考えましょう。


エスキスを難しい!と感じるのは、複合スパンにしたり、要望以上の制約を自分で課したりしているのではないでしょうか。

 

考えなくてもよいこと、減点になっても致命傷じゃないものを整理できれば、合格の道はすぐ近くに見えてます。


記述は、「設問の意図」をしっかり読み取ることが重要です。課題文が施主の要望で、設問は、「施主が気にしていること」と置き換えて考えてみてください。その中でも特に気になっていることを設問として出題しています。

 

この建物の設計にどう組み込んだかを専門家として具体的に応えてください。

 

 


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法規|歩行距離の表現方法について

皆さまこんにちは。

 

今回は受験生から質問の多い(居室内から直通階段までの)歩行距離の表現方法について書いていきたいと思います。書き方を間違れば、試験上は当然減点要素と考えるべきですので、以下の要領で図面に記入してください。

 


1.歩行距離のスタート地点について

居室の(部屋の隅)が大体の場合スタート地点になると思います。部屋の仕上げ面の角ではなく、壁から少し離れた、人が立てる範囲のポイントでOKです。

*壁から50cm離れた所がスタート地点としている行政庁もあります。ので、試験用紙の半コマ程度は離れても良いと考えます。

 


2.居室に家具、机等の配置がある場合

寝室などにベットや机の記入が必要な場合があります。

(例)ユニットA~Cの個室のうち、代表的な室内プラン( 1 室)(必要な什器を含む。)

この部屋に歩行経路の記入が必要な場合は「ベットや机を避けて」歩行距離を記入してください。避けずに記入(ベットや机の上を通過)した場合は、減点になると考えるべきです。

 


3. 居室に家具、机等の配置がない場合

1.のスタート地点からドアまで最短距離でまっすぐ記入してください。

(最短距離ではなく)最大歩行距離となる測り方とする。という考え方がありますが、一方で(居室内什器備品等のレイアウトが予見できない場合は、余裕のある計画が「望ましい」)という考え方もあり、過去の標準解答例では最短距離の表現になっていますので、最短距離でまっすぐ記入しても減点要素は無いと考えます。

 


(その他)

歩行距離のスタート地点を間違える方がごく稀にいますが、もし間違っていれば当然減点となります。間違える人の大半は、「作図」の段階でその場所(スタート地点を)考えています。間違えないコツとしては、「エスキスの段階で検討/エスキス用紙に記入する」のが良いと思います。作図前のエスキス段階で「アタリ」をつけておく。ということです。

 


(まとめ)

上記の内容は、「本来は言わずもがな」なのですが、法規的な項目の減点は(比較的大きな減点となる可能性が高い)、結果(この1つのミスで)合否を分ける可能性がある。と考えています。

 

ベストなプランを計画するのを目指すのではなく、ベターなプランで法規的に減点をもらわず、書き漏れのない様にすれば合格はすぐ近くにある。と思っています。

 


次回は敷地内通路について書いてみようと思います。

一級建築士合格発表の雑感②

みなさまこんにちは。

前回に引き続き、合格発表の雑感を書いていきたいと思います。

 

5.今年の問題の難易度は易しい。

公表された標準解答例と問題用紙を見ると、特段おどろく様な内容はなく、良い意味で「普通の問題」であったと思っている。

まずは①ユニット型の計画に慣れていたかどうか?

これは資格学校ごとに「ヤマ」を張っているわけではないと思うが、ユニット型の課題の出た回数が学校ごとで差があったと聞いている。

やはり「慣れ」というのはそこそこ重要で、エスキスがあまり得意でない人でも「ユニット型に慣れていた」ことによりエスキスに掛ける時間が短縮され、その結果図面や計画の要点に時間を掛けることや見直し時間を確保でき、減点項目を回避することが出来たのではないか。

ただ、ユニット部分は比較的組みやすい室構成になっていたため、ユニット型に慣れていない人でもエスキスに不安がない人であればそんなに時間は掛からなかったと思う。

次に、②法令への重大な不適合 に該当していなくても、表記ミス、書き忘れ があればそこそこの減点にはなっていると思われる。試験元がどのような減点構成かは知る由もないが、例えば、大・中・小減点の3つに分けたと仮定すると「中」減点くらいに該当するのではないか。と思う。

これら①、②以外にも合否を左右する大きな要素は何か無いかと解答例/問題を何度も考察してみたが、見当たらない。

いずれにせよ、①、②をクリアすれば(一発不合格要素をもちろんクリアしての話だが)あとは小さな減点を喰らわなければ、合格。という感じであろう。

 

6.なぜ不合格なのかわからない方へ

何百人と添削してきた中で思うのは、何度も不合格している人は「どこかクセのある」図面、文章(計画の要点)であり、当の本人はそれに気づいていない。また、指摘されると「そんなはずはない」と思い込み、素直に受け入れられない人が多いように思う。柔軟さに欠けるという点である。

一方、今年度から大学を卒業したばかりの若い人は(いい意味で)知識がない分、意見を素直に取り入れる傾向にあるだろうから、有利に働くのでは無いかと考えている。(SNSなどを見ると、多分簡単だったんだろうなということが伺えられる。)

「ここはそんなに減点では無いはずだ」、「ここは減点だろう」と思い込みをせず、素直に文章を読み込める人であれば、合格はすぐ近くにあると思っている。建築の実務上の知識や経験は、この試験ではあまり意味をなさず、また、必ず有利に働くわけではないという自己認識が必要である。

 

7.お知らせ

2〜3月頃に本サイトで令和3年度向けにオリジナル課題を提供する予定です。

令和2年度の標準解答例の内容に対応した最新版の課題を作成しますので、是非解いてみてください。

 

 

 

 

 

一級建築士合格発表の雑感①

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

昨年の9月頃からTwitterでつぶやいておりましたが、今年からブログでも情報発信していこうと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

 

先日、一級建築士の合格発表がありました。

合格した方、おめでとうございます。残念ながら不合格だった方は今年リベンジして欲しい所ですが、今回は、発表された標準解答例やランク別の%(パーセンテージ)を見た雑感を少し書いて行きたいと思います。

 

1.ランクⅡの割合は5.6%と前年と同様に低数値であった。

前年度のランクⅡは(10月13日実施/3.0%、12月8日実施/5.3%)であったが、今年度も前年同様に5.6%と低数値である。

おそらく、ランクⅠとⅡ(①)、ランクⅢ(②)、ランクⅣ(③)と①〜③の3段階にカテゴライズされたあとに、合格率とのバランスを見ながらランクⅠ→ランクⅡに振り分けしていることが想定される。いきなりランクⅡに振り分けられるというのは考えづらいと思う。

 

2.ランクⅢ、Ⅳへの振り分け方法について

合格発表の公表資料に該当する以下の2つに該当する答案は即ランクⅢまたはⅣになり、そこで終了と考えるべきである。

(以下の①②の2点)

①・設計条件に関する基礎的な不適合:「各ユニットのゾーニング等が不適切」、「要求している室の欠落」、「要求している主要な室等の床面積の不適合」等


②・法令への重大な不適合:「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、「道路高さ制限」や「直通階段に至る重複区間の長さ」等

(※建築技術普及センター 公表資料より引用し一部加工)

 

この2点に該当した答案は、①そもそも提示した設計条件を基本的に理解していない、②建築基準法に適合していない建築物(不適合建築物)を計画する人に一級建築士の免許は与えられない。と理解していいと考える。

 

3.ランクⅠ、Ⅱの振り分け方法の仮説

上記2.に該当しない答案が、細かくチェックされ、ランクⅠ、Ⅱに振り分けされていくと考えられるが、ここからは図面に描かなければいけない物(..を設ける)や、所要室の有無や要求面積の割合等、細かい採点されていくと考えられる。

 

1〜3はそれこそ当たり前な内容なのだが、逆にこれをクリアすれば合格すると考えれば案外難しいことではなく、シンプルな採点の仕方なのではないか。と個人的には思っている。ただ例年の合格率は40%前後(今年はやや低めの34.4%)であり、受験者の方は皆かなりの時間を割いて勉強しているため、容易ではないことは確かである。

 

4.採点方法に文句を言っても仕方がない

SNSやブログなどで合格基準等についての内容に不満があったり、こんな採点方法で良いのか?などの意見を見るが、個人的な感想としては採点自体は平等に行っており、また、採点の仕方、基準などは時代によって変わっていくため、採点基準等には全く問題ないと思っている。

それよりも、発表された合格基準や標準解答例を見て、次年度の受験に活かす方がいいだろう。(ただ、各人で分析するのは正直大変な作業で、どこかポイントかも分かりずらい(分かっていれば合格するであろう)ので、この部分については後々このサイトでも書いていければと思っています。

 

次回へ続く